地元のインフラ企業で働いております。昨年結婚して自宅の購入も考えていたところ、会社から他県への転勤を言い渡されました。まだ新婚ということで上司に抗議もしましたが、会社側は「総合職だから異動ができないなら辞めてもらうしかない」と断固として譲りません。正直な想いとしては、今の仕事は続けたいし、転勤もしたくないです。でも一方的に会社都合を押し付けられることに憤りも感じています。客観的なアドバイスをお聞きしたいです。
望まない人事異動ほど、辛いものはないですよね。好きな仕事をされていて、結婚し、マイホームまでお考えなら、今の充実した毎日を手放すなんてバカげているように感じてしまうこともムリはないと思います。
「客観的なアドバイスを」とのことでしたので、本当に客観的にお話すると、非情に聞こえるかもしれませんが、「総合職の転勤・異動はやむなし」という結論となります。古い地方のインフラ企業なら「尚更」といったところでしょう。一般的に「正社員・総合職」の組織の人事異動命令権は強く肯定されているため、正当な理由なく人事異動を断った場合は「懲戒解雇」の対象となります。会社との直接交渉が決裂し、労働審判や裁判で争っても非常に不利な戦いとなるケースが多いです。
理由は、日本の「カイシャ」の雇用慣習は、歴史的に第二次世界大戦中に土壌が固まっていきますが、「運命共同体」の色を濃く残しているからです。食料や仕事を融通し合う互助組織のような役割を担ってきました。組織に忠誠を誓う代わりに、簡単に首は切られない、安心・安全を約束されるのです。戦後の労働組合は、この原則を推し進めて「正社員」という特権階級を確立しました。
日本のカイシャは、最初に「人」ありき。まず組織の仲間として迎い入れられ、それからその人に合った仕事をカイシャは用意します。この慣習を「メンバーシップ型雇用」と呼んだりします。対して、海外は職能ギルドのような最初に「仕事」ありきの「ジョブ型雇用」です。海外の会社はまず、組織の役割・仕事(=ジョブ)を決めて、その椅子をめぐって労働者は競争します。だから、IT化で不要な仕事がなくなれば容易にリストラします。ですが、日本は「組織に忠誠を誓う代わりに、何かしら仕事を与える」ことを優先して首は斬りません。少なくとも、これまでの日本のカイシャは。
このような背景から、組織の仲間を互いに守るために、組織に忠誠を誓い、組織の都合に従う限りにおいて、「正社員」という特権階級を保証される。この原則から言って、「会社都合よりも個人の自由意思」と「将来にわたる安全・安心」はトレードオフの関係になります。言ってみれば、「ムラ社会」です。ムラの掟に従えないなら、ムラから出ていってくれ、となるのは仕方がないことです。個人の自由意思を最大限に尊重するなら、外資系企業やフリーランスのような「ジョブ型」の働き方へ、依存心を捨てマインドチェンジすることをオススメいたします。
ただ、まったく転勤を拒否できないわけではありません。過去の判例では『雇用契約に勤務地は〇〇であると明記されていた』ケース(大阪地判H28.2.25)、『退職を促すための嫌がらせだと認められた』ケース(大阪高裁H13.11.29)、『子供の病気など労働者の養育の配慮に反しているとされた』ケース(大阪高裁H14.12.27)などがあります。詳しくは弁護士にご相談されるのが良いと思います。また、最後に、転勤という「想定外の転機」にこそ、”想定外の”チャンスや幸せな未来が待っている可能性があることも追伸として添えておきます。
キャリアコンサルタント/夏生 隼成




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